CSRマーケティングとは?企業の価値と信頼につなげた事例も紹介
SNS利用者の増加や価値観の多様化により、顧客が積極的に物やサービスを選択する時代へと変化してきました。
個人が自由に情報を発信できるようになった現在、利益だけを追求し社会的な責任を果たさない企業への評価は厳しく、売上にも影響を与えます。
そのため、企業はCSR活動に積極的に行い、周囲から信頼を得る必要があるでしょう。
CSRマーケティングの基本と実践方法、成功事例について紹介していきます。
01CSRマーケティングとは?
CSRとは「企業の社会的責任」を指します。
CSRマーケティングは、企業が社会の一員として責任を持ち、社会貢献活動を通じてステークホルダーから信頼され、ブランディングを図る方法です。
CSR活動に関係するステークホルダー(利害関係者)には以下の人々が含まれます。
- 個人や法人の顧客
- 自社のビジネスに関連する地域に住む住民
- 従業員やその企業で就職を希望する人
- 政府や市町村などの行政機関
- 株主・投資家・融資契約している金融機関
- パートナーグループ
CSRマーケティング活動は、環境問題や、貧困、教育、雇用への対応、提供する商品の安全性や原材料を正しく表示することなど多岐にわたります。
他社との差別化を図り顧客に選ばれるためには、説明責任を果たし社会から信頼される企業であることが重要です。
CSR活動への取り組みは、ステークホルダーから信頼を獲得し、良い関係を築くのに役立つでしょう。
02混合しやすい用語は
CSR活動の多くは社会貢献活動に近いものですが、ボランティア活動と同じではありません。
ボランティア活動は、義務や強制ではなく自発的に行われるものです。
CSRは企業が果たすべき義務で、すべての企業が取り組まなければならない課題でもあります。
この他にも、混合しやすい4つの用語についてお伝えしておきます。
- ソーシャルマーケティング
- サステナビリティ
- CSV(Creating Shared Value)
- CRM(Cause related marketing)
ソーシャルマーケティング
ソーシャルマーケティングとは、地域の清掃活動やボランティアなど社会から評価される活動への取り組みを知ってもらうことで共感を集め、自社の認知度と企業イメージのアップをはかるマーケティング手法です。
CSRマーケティングと同様に、自社の売上や利益だけにこだわらず社会全体の利益や福祉を考えた活動ですが、企業の認知度をアップさせ利益につながる場合もあります。
サステナビリティ
サステナビリティとは「持続可能な」という意味です。
企業が果たすべき社会的責任(CSR)の中に「サステナビリティ」も含まれています。
CSRでは、環境・社会・経済など社会全体を視野に入れて「サステナビリティ」なマーケティング活動に取り組む必要があるでしょう。
CSV(Creating Shared Value)
CSVは「共通価値の創造」のことです。
企業が社会の問題やニーズに応える活動を通して、社会的価値と経済的な価値の両方を創造するアプローチ方法になります。
CSRマーケティングは自社の利益にこだわらず社会貢献活動を行うのに対し、CSVは利益につながる事業として社会貢献活動に取り組みます。
具体的な例とし、健康食品を開発している企業が自社の技術を使い、社会的ニーズのある低カロリーの甘味料を開発し販売するといったことが挙げられます。
CRM(Cause related marketing)
CRMとは、社会的責任を果たすための活動と企業やサービス名を結びつけることで、CSR活動と企業の認知度アップを狙うマーケティング手法です。
CSRとソーシャルマーケティングは、直接利益を意識しておこなう活動ではありません。
そのため、社会貢献活動と利益を追求する目的で考えられたのがCRMです。
CRMの例として、商品パッケージや広告で「売上の一部を寄付」したり、「環境保全のために使用」されていることアピールしたりすることで社会問題に取り組みながら、他の商品と差別化をはかり売上アップにつなげていきます。
CRMは、活動に取り組む企業と社会の両方にメリットのある手法です。
03CSRマーケティングのメリット
CSRマーケティングのメリットについてお伝えします。
- 企業のイメージや価値が向上する
- ステークホルダーと良好な関係が築ける
- 優秀な人材が確保でき既存の社員満足度も向上する
企業のイメージや価値が向上する
1970年代の公害や偽装表示問題により、社会的責任を果たさない企業に対して厳しい目が向けられるようになりました。
CSR活動をマーケティングに取り入れている企業は、ステークホルダーからも信頼され、価値の高い企業として評価されます。
信頼され企業価値の高い企業は差別化され、自社製品やサービスの売上アップや投資家からの融資も受けやすくなるなど、さらに企業価値をあげる結果につながる可能性があります。
ステークホルダーと良好な関係が築ける
CSRマーケティングに取り組むことは、ステークホルダーからの信頼を獲得する手段にもなります。
CSR活動をおこない社会的に信頼されている企業は、自然にステークホルダーとも良好な関係を築けるようになり、マーケティングで新規顧客の獲得や競争力の強化に役立つでしょう。
また、信頼され価値の高い企業との取引は、取引先にとってもイメージアップなどメリットがあるため、取引が中断するリスクが低く安定した経営につながります。
優秀な人材が確保でき既存の社員満足度も向上する
マーケティング以外でも、労働条件や労働環境の改善など従業員へのCSR活動は、社員の満足度を向上させます。
CSR活動で従業員が満足している企業は、社員の離職率も低く、高いスキルを持つ社員を失うリスクも低くなるでしょう。
また、社員も社会貢献活動に関わることで、マーケティング以外でも働く意味を見出しやすく満足感へとつながる可能性があります。
さらに、社会的に信頼されている企業で働く社員は、周囲から良い印象を持たれることがあり、CSR活動で優秀な人材も集まりやすくなります。
04CSRマーケティングの手法
まずは、CSRにはどのような活動が含まれているのか具体例を見てみましょう。
どのような活動に取り組むのか決定したら、この後にお伝えする「CSRマーケティングに取り組む流れ」にそって実施しましょう。
- 地球環境への配慮や、ボランティア活動への支援
- 地域の社会活動への参加
- 安全や健康に配慮した職場環境の整備と従業員への支援
- 法や規則の厳守(コンプライアンス)
- 適切な企業統治と情報の開示
- 誠実な消費者や取引先との対応や関係
「CSRマーケティングに取り組む流れ」を説明します。
- 社会的ニーズやCSR活動で成功した事例をチェックする
- 集めた情報から自社に適したCSR活動を考える
- HPやSNS、プレスリリースなどで広く開示する
- 効果や反響を確認し対応する
社会的ニーズや成功した事例をチェックする
社会的ニーズの高い分野や成功している事例をチェックし、現在どのようなことが求められ注目が集まっているのかを考えます。
集めた情報は、自社に適したCSR活動を考える際に活用できるよう整理しておきます。
集めた情報から自社に適したCSR活動を考える
整理した情報を基にさらに話し合い、自社のCSRマーケティングに適したテーマと内容を考えます。
実施する内容が決まったら、その活動内容が自社の商品・サービスと合っているか、コストや人材は十分に確保できるか、社会的なニーズに合っているか、既に実施されているCSRマーケティングの事例も参考にして分析します。
テーマ―と内容を考える際は、マーケティング戦略や経営方針、自社製品・サービスに関連したCSR活動を選択するとよいでしょう。
具体的には、食品業界であればフードロス対策や食料支援、製紙会社なら森林保護やリサイクルに関連したCSR活動などがあげられます。
その取り組みがオリジナル性の高いものであれば、より周囲から評価され企業のイメージアップにつながりやすくなります。
HPやSNS、プレスリリースなどで広く開示する
取り組む活動内容が決まったら、CSRマーケティングに関連したイベントを企画し、プレリリースで開示するまでの運営方法を決めます。
企画やCSR活動で取り組む内容については、HPやSNS、プレスリリースなどで広く開示しましょう。
効果や反響を確認する
CSR活動を行った後は、メディアやステークホルダーなどからの反響を確認して、施策の効果を判定します。
効果を正しく判定するために、参加者へのアンケートやTwitterなどSNS上でキーワードやトレンドも検索してみましょう。
反響や効果を確認して、CSR活動に修正や追加が必要であれば実施します。
CSRマーケティングで参考となるISO26000とは
企業がCSRを取り組む際に参考となるのが、2010年11月にCSRの国際規格として作成された「ISO26000」です。
「ISO26000」は、社会的責任について示されたガイダンスになります。
初めはこのガイダンスの「社会的責任を果たすための7つの原則」の中から、取り組みやすいものを選択するとよいでしょう。
社会的責任を果たすための7つの原則は以下の通りです。
- 説明責任
- 透明性
- 倫理的な行動
- ステークホルダーの利害の尊重
- 法の支配の尊重
- 国際行動規範の尊重
- 人権の尊重
05CSR活動を知ってもらうための発信方法
十分にCSR活動を周囲に知ってもらいマーケティングに生かすためには、適切な方法で活動内容を発信する必要があります。
こちらでは、自社で行っているCSR活動を広く認知してもらうための発信方法について説明します。
- 自社の公式サイトへの掲載、社内報、公式のSNS
- Webメディア・テレビ・ラジオ・新聞などで取り上げてもらう
- SNSを駆使したキャンペーン
- 生活者参加型のイベント
自社の公式サイトへの掲載、社内報
企業にとって身近な方法として、自社の公式サイトや社内報を活用する方法があります。
自社のホームページや社内報にCSR活動について掲載することで、自社の発信する最新情報を社員に届けられます。
経営層が考える理念やビジョンを一般の従業員にまで共有できるのが自社の公式サイトや社内報を活用するメリットです。
社内で情報を共有できれば、コミュニケーションも円滑になります。
Webメディア・テレビ・ラジオ・新聞
Webメディア・テレビ・ラジオ・新聞などを活用してCSRマーケティングの活動を伝えるメリットは、不特定多数の人に情報を届けられる点です。
マーケティングでWebメディア・テレビ・ラジオ・新聞を活用すると、多くの人に短時間で情報を届けることが可能で、ネット広告よりも多くの人に読まれるので大きな反響があるかもしれません。
ただし、費用はネット広告より高額で、よりきめ細かくターゲティングするのであればネット広告の方が期待できます。
SNSを駆使したキャンペーン
SNSは無料でアカウントを作り投稿できるので、低コストで継続したCSRやマーケティングの情報発信を行うことができます。
ユーザーと企業の双方でコミュニケーションができるので、ブランディングやPRにも活用できるでしょう。
また、SNS上で注目が集まれば拡散され、さまざまなメディアに取り上げられる可能性もあります。
取り上げてくれたメディアと連絡を取り、自社とメディアとの関係性を作ることも可能です。
生活者が参加するイベント
マーケティングで顧客と企業の距離を近づけ親近感を持ってもらいやすいのが、その地域で生活する人が参加するイベントです。
その地域で生活する人が参加するイベントでは、実施したそのCSR分野に関心を持つ顧客が集まり、顧客の反応を直接確認できます。
そのため、新規顧客の獲得やロイヤルカスタマーの育成にも役立つでしょう。
06CSRマーケティングで成功している事例
CSRマーケティングで成功している2つの事例をご紹介します。
- マクドナルド
- キリン
マクドナルドの事例
マクドナルドは、売上の一部を寄付するCSR活動を行っています。
子供向けの商品である「ハッピーセット」を購入すると、1円が入院中の子供に付き添う親の宿泊施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の運営費に寄付されます。
マクドナルドの商品を購入すると顧客は慈善活動にも参加したことになり、それと同時に宿泊施設の継続した運営も可能にしています。
CSR活動は、中長期的に継続することで企業イメージや信頼感のアップにつながるので、サステナブルな流れを作ることが前提です。
マクドナルドの例では、マーケティングとCSR活動を上手く結びつけ、売上アップと共にサステナブルな流れを作っています。
キリンの事例
キリンは自社製品の原材料に被災地の果実を使用することで、被災地支援のCSR活動に取り組んでいます。
缶チューハイ「氷結」は、キリンが販売する代表的な商品です。
この中で、2013年には地震で被災した東北で収穫されたリンゴと和梨を、2017年には熊本県で収穫された温州ミカンを使用した缶チューハイ「氷結」を販売し、売上の一部を被災地支援に充てられています。
これ以外にも、こだわりのある日本国内の果実を使用して作られた缶チューハイ「氷結」は毎回好評で、マーケティング戦略でも成功していると言えます。
CSRの取り組みは「同じ商品なら社会貢献できるものを選びたい」と考える消費者に対し商品の差別化ができ、利益につなげることがあります。
- まとめ
- 今回は、CSRマーケティングの特徴と実施方法についてお伝えしました。
- CSRは、会社の義務として取り組むべき課題です。
- 個人が情報を自由に得られる時代となり、社会的責任に対応していないと判断された企業は売り上げや事業の拡大にも影響する可能性があります。
- CSRマーケティングは利益に直結するものではありませんが、ステークホルダーから信頼され、価値のある企業と判断されるためには重要な要素です。
- ぜひこの記事を参考に、CSRマーケティングに取り組んでください。
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