今や企業にとって欠かせない顧客獲得マーケティング。

そのなかでも、コスト対効果に優れたCACマーケティングに注目が集まっています。

今回は、初心者マーケターでもわかりやすいCACマーケティングの基礎から、具体的な施策まで解説していきます。

効率的な顧客獲得を目指したい企業や、マーケティングに興味がある方は参考にしてください。

01CACマーケティングの基礎を理解しよう

CACとは、インターネットを通じて利用できるSaaSやサブスクリプションのサービスには欠かせない指標です。

ここでは、CACマーケティングの基礎を理解するために、CACの計算方法とCACとCPAの違いについて紹介します。

CACの計算方法

CAC（Customer Acquisition Cost）は、新規顧客を獲得するためにかかる費用を表す指標です。

CACの計算方法は、その期間にかけたマーケティング費用を獲得した顧客数で割ることで計算でき、具体的な計算式は以下の通りになります。

▼CACの計算式

例えば、月間でマーケティング費用が10万円かかり、その期間に100人の新規顧客を獲得した場合、CACは1,000円となります。

CACは低いほど採算が良くなります。

▼CACの計算例

CACとCPAの違い

CACとは顧客獲得コストであり、新規顧客を獲得するためにかかる費用のことを指します。

一方、CPA（Cost per Acquisition）は、顧客1人当たりの獲得コストを表す指標で、「1人の顧客を獲得するためにかかる費用」を表します。

CACは獲得するまでの費用、CPAは1人当たりの費用という違いがあります。

業界や企業によっては、CACとCPAをほぼ同じ意味で使う場合がありますが、厳密には異なる指標であることに留意しましょう。

02CACの種類

CACは、新規顧客を獲得するためにかかる費用と紹介しましたが、一口に新規顧客の獲得いっても、獲得経路がさまざまあります。

より正確なCACマーケティングを用いた新規顧客の獲得の動向を検証するためには、以下のような種類を区別しなければなりません。

• Organic CAC
• Paid CAC
• Blended CAC

Organic CAC

Organic CACは、自然流入より生じる顧客獲得コストです。

そのため、インフルエンサーマーケティングなどの外部に依頼する施策や広告にかかる施策のコストは含まれません。

自然流入より生じる方法として、記事作成やSNSの投稿・口コミなどがあり、自然なトラフィックが生まれます。

サイト訪問者や顧客が増加すると、持続的な収益を確保できるようになる場合もあります。

広告などのコストをかけずに増加した顧客単価で忘れがちになりますが、CACを正確に測るためには見落とさないようにしましょう。

Paid CAC

Paid CACは、広告やプロモーションなどの有料のマーケティング活動にかかるコストです。

具体的には、デジタル広告やテレビ広告・ラジオ広告・セールスプロモーション・展示会・印刷物などにかかる費用が含まれます。

CACマーケティングにおいて、Paid CACを低く抑えることがもっとも重要になるため、広告効果の分析やターゲットセグメンテーションに注力する必要があります。

Paid CACを上回るROIを達成できれば、費用対効果の高いマーケティング活動を展開できたことになります。

Blended CAC

Blended CACは、有料広告のPaid CACだけでなく、自然流入のOrganic CACを合算したコストです。

具体的には、広告費・マーケティング費・顧客獲得に関する費用を顧客獲得数で割ったものを示します。

この方法は、有料広告だけではなく、組織全体のマーケティングに関する費用や工数にかかるコストも考慮するため、より正確なCPC（広告でユーザーをサイトに遷移させる単価）を計算できます。

また、時間の経過に伴って、投資したコストが返却されるかどうかの指標にもなり、長期的な顧客獲得コストの検証する際も利用されます。

03CACを把握することのメリットとCACが重要な理由

CACマーケティングは、企業を成長するためには欠かせない数値です。

ここでは、CACを把握することのメリットとCACが重要な理由を紹介します。

CACを把握する事のメリット

CACを把握しておくと、費用対効果の高い新規ユーザーを獲得するチャネル（流入経路）がわかり、顧客の生涯価値であるLTVの目標値を決められます。

CACを把握することで、費用対効果の高い新規ユーザー獲得チャネルが分かります。

それは、最小限のコストで新規ユーザーを獲得するための最小限の流入経路が把握できるからです。

たとえば、先ほどのOrganic CAC・Paid CAC・Blended CACの効果を検証すると、どの施策が効果的に顧客を獲得できているかわかります。

これにより、マーケティング予算を効果的に使い、最大限のROIを得ることが可能です。

そのため、CACの把握は、ビジネスにおいて非常に重要であり、企業がより良い戦略を策定する上で欠かせません。

CACを把握することで、顧客獲得にかかる直接的なコストが分かるので、LTV（顧客の生涯価値）の目標値や、獲得した顧客に対してどの程度の投資が許されるかが決められます。

一般的な目安として、LTVの3分の1以下にすることが望ましいとされており、目標を定める上での参考になります。

CACが重要な理由

CACを把握する事のメリットを把握すると、おのずと重要な理由も理解できます。

具体的に、CACが重要な理由を以下にまとめます。

CACを把握することで、どのマーケティングチャネルが効果的であり、費用対効果が高いかが明確になります。

CACの情報を元に、適切なマーケティングチャネルの選択が可能となります。

例えば、無駄な費用をかけずに、SNS広告よりもSEO施策が効果的である場合、企業はSEO施策への投資を増やすことで、より効率的な顧客獲得を実現できます。

このように、CACの把握はマーケティング戦略を構築する上で必要不可欠な情報となっています。

CACの把握をしておくと、顧客獲得にかかる直接的なコストや、そのコストを回収するために必要な売上高を計算できます。

1人あたりの採算性のことをユニットエコノミクスと呼びます。

ユニットエコノミクスの健全性を把握できれば、どの顧客層を獲得すれば、利益を得られるかが明確にすることが可能です。

適切なマーケティングチャネルを選択することで、ユニットエコノミクスを改善し、ビジネスの成長につなげられます。

04CACマーケティングの活用手順

CACマーケティングを活用するためには、以下のような内容を理解し、全体的な流れを把握する必要があります。

• 目標設定
• チャネルの選択
• 広告の作成
• セールスファンネルの設計
• ROIの評価

目標設定

CACマーケティングの活用手順として、まず目標を設定し、そのために獲得するべき顧客のターゲット層を特定することが重要です。

ターゲット層を特定することで、効率的な広告運用やサイト改善ができ、顧客数の拡大や収益増加につなげられます。

そのため、ターゲット層に合わせた広告手法やサイトの構築、商品・サービスの改善など、顧客獲得に必要な施策を検証できるようになります。

チャネルの選択

次に、獲得したい顧客層に向けてどのようなチャネルを選択する必要があります。

SNSやインフルエンサーマーケティングは、特に若年層やファッションブランドのような商品・サービスには効果的です。

また、SEOやアフィリエイトなどのデジタルマーケティングや、ポスティングやチラシ配布などのチャンネルもあります。

Webを経由せずに行う従来型のマーケティングも含め、自社に合ったチャネルを選択することが重要です。

広告の作成

次に、必要になるのが広告の作成です。

Webマーケティングにおける広告費は、コストを抑えすぎると効果が出るまでに時間がかかります。

その一方、費用をかけすぎると即効性があってもコストと収益のバランスが悪くなる可能性が出てきます。

効果的な広告を運用するためには、以下のような要素も考慮しなければなりません。

• 顧客の関心を引くイメージやコピー
• CTA（コールトゥーアクション）
• 広告の媒体

広告を設計する場合、LPやSNSの投稿などにこれらの要素を入れ、検証することが重要です。

セールスファネルの設計

チャネルの選択や広告の作成を行った後は、セールスファネルの設計も行う必要があります。

セールスファネルとは、自社のビジネスに初めて触れる人が、製品・サービスを認知した後に購入・契約の過程を経て、継続的な顧客となるまでのプロセスを段階分けしたものです。

セールスファネルの段階に合わせた戦略的マーケティング活動を行い、アプローチやコンバージョンの数を最大化し、顧客獲得の成功率を高めるとともに、CACを下げられます。

ROIの評価

実際に広告を運用した場合、最後にROIの評価を行う必要があります。

ROI（Return On Investment）とは、投資利益率をいい、利益を投資額で割ったものをパーセンテージで表したものです。

▼ROIの計算式

利益÷投資額×100＝ROI（%）

ROIが高いほど、投資した額に比べて利益が多いと評価されます。

ROIの評価を継続的に行うことで、マーケティング戦略の改善や予算の最適化につなげられます。

05CACマーケティング戦略の構築方法

CACマーケティング戦略を構築する際には、企業のビジネスモデルに合わせて戦略を策定し、ターゲット層の属性や行動について正確な情報を収集することが大切です。

また、データ分析を行ってから施策の検討をすると、より効率的な顧客獲得につなげられます。

企業のビジネスモデルに合わせて策定する

CACマーケティング戦略を構築する際には、企業のビジネスモデルに合わせた戦略の策定が重要です。

例えば、定期収益モデルを採用している企業は、顧客獲得後のリテンション（維持）が重要となるため、サポート体制やCRMなどの強化が求められます。

また、一回性のビジネスモデルで再現性がないサービスの場合は、集客も必要です。

つまり、ビジネスモデルに合わせた戦略の構築が必要であり、戦略に基づいて行うマーケティング活動が、CACの削減・改善に効果的に貢献します。

ターゲット層に対して正確な情報を獲得する

CACマーケティング戦略を構築する際には、ターゲット層に対して正確な情報が必要です。

具体的には、以下のような情報です。

• 属性（年代・性別・居住エリアなど）
• 行動パターン
• 購買履歴
• 嗜好 など

上記のような情報を理解すると、ターゲット層に対し、より効果的な広告やメッセージを配信し、CACを最小化できます。

また、正確な情報を収集するために、アンケート調査やweb解析ツールなどの活用が効果的です。

データ分析に基づいた施策を検討する

CACマーケティング戦略を構築する際には、データ分析に基づいた施策を検討することが重要です。

上記のようなターゲット層に対して、正確な情報を加味したデータ分析により、どのチャネルや広告が効果的なのか、継続的にデータ分析をしておくといいでしょう。

過去のデータや分析結果に基づいた施策は、効率的な施策の検討につながります。

その結果、CACを低減し、より効率的なマーケティング施策を実施できるようになります。

06CACを改善するには？

CACを改善する方法は、広告の最適化やコンバージョン率（CVR）の向上、工数の削減などがあります。

それぞれの方法を以下に説明します。

広告の最適化

CACを改善するためには、まず広告の最適化を行うことが重要です。

広告の配信タイミングやターゲット層の設定、広告コピーの改善やランディングページの最適化など、さまざまな観点から考える必要があります。

これらの最適化を行うことで、広告のクリック率やコンバージョン率を向上させ、最終的にCACの改善につなげられます。

コンバージョン率（CVR）を高める

CACを改善するには、コンバージョン率（CVR）を高める必要があると説明しましたが、具体的には以下のような方法があります。

• LP（ランディングページ）の改善
• 商品やサービスの提供価値の明確化
• CTA（Call to Action）ボタンの改善 など
• ABテストの実施

上記のような施策を行うと、コンバージョン率（CVR）の改善に有効です。

また、ABテストの実施は、どの要素がCVRに影響を与えているのか、詳細に検証できます。

CVRを高めることで、同じ広告費でより多くのコンバージョンを獲得し、CACの改善につなげましょう。

工数の削減

CACを改善するには、工数の削減も考慮することも必要です。

例えば、プロセスの効率化や自動化などを行うと、人件費や時間の削減を図れます。

また、顧客サポートやマーケティング活動などを外部委託することも、工数削減につながる場合があります。

ただし、委託先の選択には慎重に行い、信頼性や実績のあるパートナーを選ぶことが重要です。

07CACマーケティング施策例

CACマーケティングの具体例として、SNSを活用したプロモーションやインフルエンサーマーケティング・コンテンツマーケティング・SEO対策などが挙げられます。

これらの施策を活用することで、顧客獲得に必要なコストを抑えつつ、長期的な顧客獲得につなげられます。

SNSを活用したプロモーション

SNSを活用したCACマーケティング施策では、ターゲット層に合ったコンテンツを積極的に投稿することが重要です。

また、ユーザー参加型のキャンペーンを企画し、次に紹介する拡散力の高いインフルエンサーやブランドアンバサダーを活用すると、より効果的なプロモーションが可能となります。

さらに、SNS広告の最適化やCVRの向上に注力することも大切です。

これらを組み合わせた戦略的な施策により、CACの改善につなげられます。

インフルエンサーマーケティング

インフルエンサーマーケティングとは、有名人や影響力のある人々が商品やサービスを宣伝することで、その商品やサービスを購入する人を増やすマーケティング手法です。

SNSなどのインターネット上での宣伝活動が多いため、SNSを活用したCACマーケティング施策に適した方法といえます。

ただし、インフルエンサーの選定や報酬の支払いなどに注意が必要です。

コンテンツマーケティング

CACマーケティング施策の具体例として、コンテンツマーケティングがあります。

コンテンツマーケティングとは、自社が提供するコンテンツを通じて、顧客の興味を引き出し、ブランドロイヤルティを高めるマーケティング手法です。

例えば、専門家によるコラムや、調査結果やトレンドの解説など、より深い専門的知識を提供できます。

そのため、長期的な顧客維持につながるメリットがあります。

また、偽装感が少なく、信頼性が高いため、ユーザーからの共感やシェアが増やせるというメリットもあります。

SEO対策

長期的な顧客維持をするためには、無視できない重要な施策としてSEO対策があります。

具体的な施策としては、適切なキーワードの選定や、タイトル・メタディスクリプションの最適化、リンクネットワークの構築などが挙げられます。

SEO対策は、今後もずっと続く長期的な顧客獲得や固定化の重要な施策となるため、しっかりとした取り組みが必要です。

08CACマーケティングの可能性と今後の展望

CACマーケティングは、顧客獲得コストを削減し、長期的な顧客獲得につなげる重要な手法であり、企業にとって必要不可欠なマーケティング活動です。

しかしながら、広告コストの高騰や競合激化により、CACマーケティングの持続可能性については、今後注視される必要があります。

それは環境の変化に対応し、新たな施策を取り入れたり、顧客獲得の削減や効率化を追求したりすることが求められるからです。

また、今後はより生活者の価値観や行動パターンの変化を踏まえ、顧客体験を重視したマーケティングが求められています。

持続的なCACマーケティング活動を行うことで、競争優位性を獲得し、今後も業績を拡大に期待されます。