中小企業に適したマーケティングの取り組み方と成功事例を紹介!
人材や資源が限られている中小企業では、マーケティングに取り組む余裕がなかったり、必要性を感じていなかったりする経営者の方もおられるかもしれません。
現在はマーケティング環境の変化が早く、安定的に事業を継続させるためには、戦略に基づいた経営が不可欠です。
この記事では、中小企業の現状から成功事例までを説明しています。
01中小企業でもマーケティングは必要?
今までマーケティングの必要性を感じていなかった中小企業にとっても、インターネットの普及による顧客の購買行動プロセスの変化と、少子高齢化でマーケティングの重要性は高くなっています。
マーケティングとは、企業が運営を続けるために顧客のニーズを把握し、商品やサービスが自然に売れる仕組みを作ることです。
現在は市場にさまざまな製品があふれ、インターネットの普及で顧客は容易に商品やサービスを検索し、評価してから購入できるようになりました。
市場を取り巻く環境の変化により、マス広告などの従来の方法では新規顧客を獲得しにくくなり、既存の顧客も他社の商品・サービスが優れていると判断した場合、他社に移ってしまう可能性があります。
さらに、少子高齢化により今後は国内の市場規模も縮小傾向です。
こうした市場環境は、資金や人材が限られている中小企業には不利に感じられるかもしれませんが、実際はそうではありません。
人数が少ないからこそ意思決定が早く、時代の変化に柔軟に対応しやすい中小企業はチャンスに変えることもできます。
とはいえ、大企業と同じようにマーケティングを展開しても同じ効果が得られるとは限りません。
大企業の方法を真似るのではなく、中小企業の強みを生かし、その企業ならではのアイデアを取り入れたマーケティングを実践すれば、厳しい市場環境下でも企業の成長を目指すことができるでしょう。
02中小企業のマーケティングの現状と課題
効果的なマーケティングを進める上で重要となる、マーケティングの現状と課題について説明していきます。
正しく現状を把握し分析することが、中小企業が効果的なマーケティングを実践するための第一歩となるでしょう。
- マーケティングの知識を持った人材が不足している
- マーケティングへの優先順位が低い
- ITの導入が遅れている
マーケティングの知識を持った人材が不足している
中小企業は大企業と比べ人材が少なく、複数の業務を1人で担当している場合もあるため、マーケティングに十分な時間をかける余裕がないというのが現状です。
効果的なマーケティングを実践するには、一般的なマーケティングの知識に加え、顧客の購買プロセスの変化によりITスキルと、デジタルマーケティングの知識が重要になっています。
しかし、このような知識をもつ人材はどの業種でも不足しており、資金や人材が限られている中小企業にとっては新たな人材を確保することも、社内で教育するのも厳しい状況です。
このケースでは、一時的でも外部の人材を活用し、長期的な視点で社内のマーケティング人材の育成に取り組むのも良いでしょう。
マーケティングへの優先順位が低い
中小企業の特徴は、独自性の高い商品・サービスを中心に事業展開している企業が多く存在することです。
中小企業では、既存の顧客との関係が深く、コアな顧客がいるため事業が安定し、新規の顧客開拓やマーケティングの実践に積極的でないケースが見られます。
しかし、長期的に見ると新規顧客を獲得できなかった場合、コアな顧客もいずれ減少する可能性があり、事業の継続や新たな事業展開が難しくなるかもしれません。
このため現在経営が安定している中小企業であっても、積極的にマーケティングに取り組む必要があります。
ITの導入が遅れている
中小企業でも、業種や従業員数によりIT導入の割合に差があります。
2021年時点で従業員数が301人以上の企業のIT導入率は、85%に達していました。
一方、従業員数が5人以下の企業では、IT導入率が39.9%と低くなっています。
マーケティングを成功に導くポイントとなるのが、正しい現状の把握です。
正しい現状の把握には、膨大な量の情報を収集・整理し分析する必要があります。
この際の情報整理に役立つのがITツールで、仕事の効率化にも利用できます。
中小企業の中には、IT人材や予算の関係でITの導入が難しいケースがあるかもしれません。
その場合は、国の補助金を利用してみるのも良いでしょう。
2023年IT導入補助金の対象には、パソコンやスキャナ、券売機などのハードウエアー、ウイルス対策のソフトウェア等も含まれています。
03中小企業がマーケティングを行うメリット
中小企業がマーケティングに取り組むメリットについてお伝えします。
すでに事業が安定している中小企業も、マーケティングに取り組むことで、さらなる成長と収益アップを目指しましょう。
- 自社のブランディング強化を図れる
- 企業の成長を促す
- 多方面で収益源を獲得できる可能性がある
- 自社の持つ強みを生かした経営ができる
自社のブランディング強化をはかれる
中小企業も積極的にマーケティングを行うことで、自社のブランディングの強化が図れます。
ブランディングの目的は、競合他社との差別化です。
顧客が商品を選ぶ際に、同じ機能性・価格ならば、顧客はその企業に持つイメージや信頼感、付加価値で商品やサービスを選択することがあります。
このため、中小企業はマーケティング活動を通じて、顧客に与えたいブランドイメージを明確にアピールする必要があります。
ブランドイメージが定着すると、その企業に魅力を感じ応募してくれる求職者も現れるため人材確保にもつながります。
また、大手企業が競合他社であった場合も、市場の変化に応じたブランディングに成功していれば顧客から選ばれる可能性が高くなるでしょう。
企業の成長を促す
マーケティング活動は、中小企業の成長を促します。
中小企業が事業を成功させるためには、自社のブランディングで他社と差別化を図ることが大切です。
マーケティング活動の中にブランディングが含まれており、他社と差別化できれば新規顧客や優良顧客が増え収益が安定してくるので、企業の成長につながります。
また、安定した収益を上げている中小企業の企業価値は、自然と高くなっていくでしょう。
多方面で収益源を獲得できる可能性がある
マーケティングやブランディングの強化活動により、既存の顧客に加え新規の顧客も増やすことができます。
収集した顧客情報・消費者の市場動向、競合のデータ、取引先とのコミュニティーなどの経営資源は、自社の経営を見直すだけでなく、新たな事業を展開する際の強みになります。
予期しない変化が市場に起きた場合でも、複数の収入源があればリスクは下げられます。
マーケティング活動は、新たな事業展開へのヒントになるかもしれません。
自社の持つ強みを生かした経営ができる
マーケティングのポイントとなるのが、自社と周囲の環境、市場を分析することです。
企業側は、複数のフレームワークを使用し分析することで、自社の強み・弱みが明らかになります。
中小企業は、意思決定が早く、市場の変化にもすばやく対応しやすいが特徴です。
分析で見つけた自社の強みを、早期に戦略に取り入れてみましょう。
04中小企業ならではのマーケティング手法を紹介
大企業では実践できないような戦略で成功している中小企業の手法についてご紹介しましょう。
- 赤城乳業
- 今治タオル
赤城乳業
赤城乳業は、埼玉県に本社があるアイスクリーム専業メーカーです。
この中小企業が大切にしているのは「異端」で、他社を真似ることなく、一般的な慣習にもこだわらず、自社の持つ技術や工夫を生かしたマーケティングを展開しています。
具体的な例として、1980年、同業社の中では一般的ではなかった販売経路・コンビニエンスストアーでアイスクリームの販売を始めたのが赤城乳業でした。
さらに、主力商品である「ガリガリ君」の売上を伸ばすため、人気がなかったイメージキャラクターのブランディング活動や、クラブにあたる「ガリガリ部」を設立。
ガリガリ部のアンケートに基づいたフレーバーの開発や、コーンポータージュ、卵焼き味など一般的ではない味を販売することで話題作りをしています。
こうしたマーケティングの結果、「ガリガリ君」の売上は、年間1億本(2004年)から年間4億本(2013年)に伸びています。
今治タオル
低迷していた今治タオルの売上をアップするため取り組んだのは、他商品との差別化でした。
今治タオルは、愛媛県の今治市で作られるタオルの総称です。
日本でも有数の上質なタオル産地として知られていましたが、外国産の安価なタオルの輸入により2000年代には売上が落ちていました。
その状況を打開するため、2006年から実施されたのが「今治タオルプロジェクト」です。
今治タオルプロジェクトは、厳しい基準をクリアした商品にのみ今治ブランドの認定を与え、他のタオルとの差別化を図ることで今治タオルの質の高さを顧客にアピールするものです。
認定を受けるテストの中に「5秒ルール」があります。
これはタオルの吸水性を調べるテストで、洗濯前の1回と3回洗濯後の2回実施されます。
1cmにカットしたタオルを水に浮かべ、5秒以内にタオルが沈めば合格です。
この他にも、脱毛率や色落ち、ホルムアルデヒドの残留など検査は複数に及びます。
こうした検査による厳しい認定制度により、今治タオルは高品質のタオルとして認められ、海外でも人気があります。
05中小企業がマーケティングを成功させるには?
中小企業がマーケティングを成功させるための5つのポイントについてお伝えします。
- 無理なく業務を進行できる環境を整える
- 個々のスキルアップをはかる
- 自社の強みをいかしたマーケティング戦略を考える
- トレンドに左右されない
- デジタル化をすすめ業務の負担を軽減する
無理なく業務を進行できる環境を整える
人材の少ない中小企業では、社長や役員がマーケティングも担当しているケースがあります。
マーケティングの効果が表れるまでにはある程度の時間が必要で、専門的な知識も要求されます。
こうした事情を理解し、多忙な日常業務の中でも、マーケティング担当者が安心してマーケティング活動に取り組めるよう社内の環境を整えましょう。
具体的な環境整備の方法として、業務量の調整や、パソコンや解析ツールなどマーケティングに必要な機材の整備、社内の勉強会や外部のセミナーへの参加費用の支援などがあります。
個々のスキルアップを図る
中小企業がマーケティングを成功させるには、社内のメンバー全員が同じ目標を理解し、協力体制を整えることも大切です。
必要な情報を共有できるよう、社内のメンバー全員でマーケティングの知識を深めてください。
マーケティングに初めて関わるメンバーは、フレームワーク(事業の課題を明確にするための思考の枠組み)の理解から始めると良いでしょう。
マーケティングでよく知られているフレームワークは、4P分析・SWOT分析・3C分析・PEST分析などです。
目的に応じて、いくつかのフレームワークを組み合わせて使用される場合があります。
4P分析と3C分析については下記のコラムも参考にご覧ください。
『3C分析とはマーケティングで活用する目的から方法と事例をご紹介』
自社の強みを生かしたマーケティング戦略を考える
資金や人材が限られている中小企業にとって、自社の強みを生かした戦略もマーケティングで成功するためのポイントになります。
自社の強みや現状、中小企業を取り巻く環境をしっかりと分析・把握してからマーケティング戦略を考えましょう。中小企業にとっての強みは、意思決定の速さや、環境の変化に柔軟に対応しやすい点です。
このため、中小企業は市場環境やトレンドの変化にもすばやく対応できる強みがあります。
中小企業ならではの製品や、きめ細かいサービスなど、顧客が本当に必要としていることを提供できれば、安価な商品・サービスでなくても顧客から支持されるでしょう。
トレンドに左右されない
その時点で流行っている物やサービスは、すでに大企業が参入している可能性があります。
中小企業は、現時点でトレンドになっている物やサービスの分野に参入するよりも、自社の強みを生かしたマーケティングを目指してください。
トレンドのマーケティング分野で大企業と中小企業が競うと、圧倒的に中小企業が不利なケースが多いでしょう。
というのも、広告を運用する規模や予算が大きく違うからです。
中小企業は、自社の商品・サービス以外のトレンドを追うよりも自社の強みを生かしたマーケティングを目標にしてください。
デジタル化をすすめ業務の負担を軽減する
人材に限りのある中小企業は業務の負担を軽減するため、積極的にITの導入を考慮しましょう。
中小企業がITを導入することで情報の共有や管理がしやすくなり、業務の短縮が可能になります。
社内メンバーに時間に余裕ができれば、マーケティングに取り組みやすくなり生産性や利益アップにつながるでしょう。
また、戦略を考えるのに必要な情報の分析にもITは使用できます。
Webマーケティングに取り組む
経営資源が限られている中小企業は、できるだけ早く効果がでる方法でマーケティングを進めて行きましょう。
マス広告よりも、低予算ですばやく複数の見込み客に到達できる方法がWebマーケティングです。
具体的には、リスティング広告(検索連動型広告)やメルマガであれば、1~2カ月で効果を実感できる場合があります。
一方、TwitterやInstagramなどのSNSや自社サイト等は、成果がでるまでに6カ月~1年ほどかかるかもしれません。
より多くの人に情報を届けたいのであれば、時間はかかりますがSEO対策をしっかりした上で、ブログの運営も考慮します。
中小企業は、戦略に応じてWebマーケティングにも取り組んでみましょう。
- まとめ
- 今回、中小企業とマーケティングの現状とについてお伝えしました。
- 安定している中小企業では、マーケティングの必要性を感じられていないかもしれません。
- しかし、資源や人材が限られた中小企業だからこそ、選択を繰り返し集中してマーケティングに取り組む必要があります。
- 目まぐるしく市場環境が変化する現在では、先行きが見通しにくく、中小企業が長期的に経営を安定させるためには、戦略が重要です。
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